初期費用の内容までしっかりと理解して頂けるように

お部屋を借りる時の費用は物件によって金額が異なるので、〇〇円以上だと割高という線引きが出来ません。また内容をしっかり理解していないと、初期費用が安く収まったとしても、退去時に大きく費用がかかってしまうケースもございます。

例えば敷金有りの初期費用10万円と敷金無しの初期費用10万円であれば同じ10万円でも全く内容が異なります。お部屋を退去する際の負担も大きく変わってきますが、それをしっかりと理解されている方がどれだけいらっしゃるでしょうか?このページでは初期費用の安い、高いだけではなく、項目ごとにしっかりと内容をご理解頂く事を目的にしています。

まずは初期費用の基本的な項目をみてみましょう

  • 敷金(保証金)…退去の際に返還される預かり金。家賃の1ヶ月分が一般的詳しくみる
  • 礼金…一度支払うと戻ってくる事は無い。家賃の1ヶ月分が一般的詳しくみる
  • 仲介手数料…初期費用の中で唯一、仲介不動産会社に支払う手数料。家賃の1ヶ月分+消費税が上限金額となる詳しくみる
  • 前家賃…入居する月の家賃を初期費用として支払う。入居するタイミングによって0.5ヶ月分~1.5ヶ月分に変動する。フリーレントがある場合は無料期間あり詳しくみる
  • 保険料…火災、水漏れ、盗難などをカバーする保険。現在加入中のものを引継ぐ事が出来る場合もあり詳しくみる
  • 保証会社費用…保証会社を利用する際にかかる。金額は利用する保証会社によって様々詳しくみる
  • ペット礼金、ペット消臭料…ペットを飼育する場合にかかる詳しくみる
  • 水廻り清掃料・暖房器具関係費用・鍵交換費用・その他の初期費用…物件により多様な項目がある詳しくみる
  • 【最後のまとめ】初期費用の内容を理解して、実際にお得な条件を引き出すにはどうすればいいのか?詳しくみる
項目 金額の相場 使用時期 支払先
敷金 家賃の1ヶ月分 退去時 貸主
礼金 家賃の1ヶ月分 貸主
仲介手数料 家賃の1ヶ月分+消費税 仲介業者
前家賃 0.5~1.5ヶ月分 貸主
保険料 15,000~20,000円 入居期間中 保険代理店
保証会社費用 0円~家賃の1ヶ月分 入居期間中 保証会社
ペット礼金 家賃の1ヶ月分 貸主
清掃料 物件により異なる 退去時 貸主

敷金(保証金)とは?

家賃の1ヶ月分が一般的です。最近は敷金を預けなくてもよい物件が増えています。

敷金は大家さん・管理会社に預けるお金で、原則的に必ず返還されます。家賃を滞納したまま居なくなってしまったり、お部屋を退室する際に補修箇所があったり、退去時に精算するお金があればそれを差し引いて返還されます。貸す側が『何かあった時の事を考えて先にお金を預かっておきたいな』と考えて預かるお金が敷金です。ただ最近の傾向として空室も増えてきて、貸す側の立場が弱くなってきておりますので、敷金を預けなくてもよい物件も増えています。

敷金なしはお得なの!?

敷金の有無は、最終的にお部屋を退去する時の事まで考えるとプラスマイナスゼロです。貸す側からみると最終的に返還しなければならないので、敷金を預かっても預からなくてもデメリットはありません。逆に言えば、借りるお客様が敷金が無くなった事を『お得になった』と認識していると、退去の際に高額な費用がかかってしまうというケースもございますのでご注意ください。

礼金

敷金と同様に家賃の1ヶ月分が一般的です。

基本的に札幌市内のほとんどの物件は礼金不要です。今の時代では想像しにくいかもしれませんが、住宅の確保が難しい時代に、住むところを提供してくれた大家さんへのお礼金が慣習として残っていると言われています。敷金とは異なり、退去時に返還になる事はありません。

現在の札幌のように全体の5分の1以上の物件で常に空室があるような状況では礼金を支払う必要がある物件を目にすることはほとんどありません。ただ、新築物件や一軒家の賃貸、分譲マンションのリースなど希少価値の高い物件で、お客様側に負担が増えても、借り手が見つかる人気物件には設定されているケースがあります。

家を借りる時の費用を考える時に【敷金礼金】とセットのように表記されますが、敷金と礼金ではまったく性質が異なります。繰り返しになりますが、敷金は最終的に戻ってくるため、契約時に支払ってもマイナスにはなりません。礼金は返還されませんので支払う事には金銭的なメリットはありません(礼金があっても入居者が確保できるような人気物件に住める!というプラスの考え方はあるかもしれません…)

仲介手数料

最大で家賃の1ヶ月分+消費税が仲介手数料の上限です。もちろんそれより低い金額や無料になることもあります。

敷金や清掃料とは異なり、仲介不動産会社(実際に接客をする不動産会社)に支払う報酬です。

仲介不動産会社が受領できる報酬額は原則的に借りる側から家賃の半月分+消費税、貸す側から半月分+消費税までが上限と法律(宅地建物取引業法第四十六条)で定められています。ただし、依頼者の承諾があればどちらか一方から1ヶ月を上限に受け取ってもいいことになっています。

居住用賃貸物件の仲介手数料の上限
貸主側から受領出来る報酬額の上限額 賃料の半月分+消費税
借主側から受領出来る報酬額の上限額 賃料の半月分+消費税
依頼者の承諾があれば、賃料の1ヶ月分+消費税を上限にどちらか一方からのみ受領する形にする事が出来る

はっきり言って、知らなくても何も問題の無い知識ですが…賃貸物件の仲介手数料は、原則規定の双方から半月分よりも、例外規定の借主側から1ヶ月分という方が一般的な認識になっています。

値引きをお願いするなら仲介手数料!?

仲介手数料については他の項目と異なり、仲介不動産会社の営業担当者がある程度決めることが出来る項目です。逆に言えば、家賃の値下げや他の初期費用を減額して欲しいという交渉については、事前に裁量が与えられているケースを除き、すべて大家さんや管理会社さんにお願いをする形になりますので、仲介不動産会社の営業担当者も、どこまで交渉出来るかわからない事が多いです。

そういう意味では仲介手数料は最もスピーディーに結論が出やすい項目と言えると思います。営業担当者側の目線に立つと『家賃を下げてくれれば契約する!』と言われても家賃の減額は大家さん、管理会社さんの判断に委ねるしかありませんが『仲介手数料を値下げしてくれれば契約する!』と言われるとすぐに可否の判断が出来、スムーズに回答できますので、その辺りを理解しながら、交渉してみると、少しお得にお引越し出来るかも知れません。

前家賃

金額については家賃の0.5ヶ月~1.5ヶ月分になる事が多いですが、契約開始(入居開始)日によって変わってきますので、その都度ご確認頂けると間違いがありません。

前家賃は初期費用の中で、最もその性質を理解していない方が多い項目かもしれません。初期費用として【前家賃】という特別なものがあるわけではなく、札幌の賃貸物件はそのほとんどが【前の月】に【翌月の家賃】を支払います。これを【前家賃】といいます。

混乱しやすいポイントとして、入居するタイミングが月の初めからなのか、途中なのか、また契約開始(入居開始)する月の翌月分まで先に支払うのかどうか?で金額が変わってしまうので「前家賃は○○円」という明確な回答が出来ず、入居する時期によって変動します。入居する日程が決まっていない状況で『前家賃はいくらですか?』と質問しても『入居するタイミングによって変わります』という何とも不明瞭な返答になります。

他の初期費用と並べて記載する事が多いので混同しがちですが、初期費用として『前家賃』という名称の費用がかかるわけでは無く『住み始める日からの家賃を他の初期費用と一緒に契約手続きの際に支払ってくださいね』という仕組みになっています。

フリーレントってなんですか?

前家賃が無料になる期間の事を【フリーレント期間】と呼びます。言葉の通り、家賃がかからずに住める期間という事です。例えばフリーレント1ヶ月という物件であれば、4月1日から住み始めると、4月分の家賃が無料になります。

前家賃やフリーレントついて、もう少し詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

前家賃をもっと詳しくみる 

保険料

火災、水漏れ、盗難事故などを保証する保険への加入も、ほぼ全ての物件で必要となります。通常は不動産会社から勧められる保険に加入する事が多く、そのほとんどが管理会社さんが代理店になっている保険に加入する形になります。

金額は賃貸物件の契約期間と同じく2年間で15,000円~20,000円程度の保険料が一般的です。万が一の時の大家さんへの賠償責任保険と、ご自分の家財道具への補償が基本的な内容となっております。

保証会社費用

保証会社の費用は使用する保証会社によって様々です。また同じ保証会社でも物件の大家さん、管理会社間での提携内容によってもプランが異なりますので、ここの保証会社の費用は○○円と一概に言えません。

保証会社の料金は

  1. 契約時に支払う初回保証委託料
  2. 更新時に支払う更新保証料
  3. 毎月支払う月額保証料

の3種類あります。全て必要なプランもあれば、初回のみ支払えば良いプランもございますので、ご自身の懐事情に合わせて、保証会社を選びたいところなのですが…保証会社は基本的には貸す側が選ぶ事が多いので、借りる側が好きに選べる事はほとんどありません。

札幌市内でお部屋を探していると目にする機会の多い保証会社をリストアップして、基本的なプランを紹介させて頂きます。

保証会社・プラン 初回保証料 更新保証料 月額保証料
全保連(80%プラン) 月額費用の80% なし なし
全保連(50%プラン) 月額費用の50% 毎年10,000円 なし
ジェイリース(80%プラン) 月額費用の80% なし なし
ジェイリース(50%プラン) 月額費用の50% 毎年10,000円 なし
CIZ宅建保証 月額費用の67.5% なし なし
日本セーフティ 月額費用の40%~ 毎年10,000円 なし
CASA(カーサ) 月額費用の70% 毎年10,000円 なし

上記以外にも数多くの保証会社が存在します。また保証会社と貸す側の契約内容によって、同じ保証会社で料金が異なるケースもございますので、物件毎に料金を確認することが肝要です。

長く住むなら更新料のかからない契約プラン!

保証会社費用の中で最も無駄になってしまう費用が毎年の更新保証料です。札幌の賃貸市場は全国的にみても家賃の滞納率が高く、保証会社が必須となっている物件が多くなっています。毎月しっかりと家賃をおさめている皆様からすれば保証会社にかかる費用は無駄になってしまいますが、その中でも毎年の更新保証料は、住み続ける限り継続して必要になってしまいますので、もしもご自分で保証会社を選べる物件であれば更新料のかからないプランを選ぶことをおすすめします(短期間で退去する予定がある場合など、長く住み続ける事を考えていない場合はプラン毎の料金を比較してご検討ください)

ペット礼金、ペット消臭料

気付けばいつからか、当たり前になっていたペット礼金。この仕組みを最初に考えた方はペットが好きではなかったのでしょうか…金額はペット礼金の場合は一般的に家賃の1ヶ月分。消臭料などの名目の場合、金額は様々ですので都度ご確認ください。

その名の通りペット「礼金」なので、返還されることは無く、退室時の補修費用に使われるわけではありません。言うなれば物件の中でペットを飼育する権利を得るためのお金といったところでしょうか。礼金と同じく支払うことに何もメリットはありませんが、ペット可物件を探していくと、かなりの確率でペット礼金が必要になります。中にはペット礼金という形ではなく、ペット消臭料といった名目で、退去時の補修費用として支払う物件もあります。さらにペット礼金不要という条件をセールスポイントにしている物件もございます。

ハウスクリーニング費用・暖房器具関係費用・鍵交換費用・その他の初期費用

敷金や礼金、仲介手数料はどの物件でも基本的には同じ呼称で請求されますが、いわゆる諸費用にあたるハウスクリーニング料などの項目はそもそもの呼称や用途自体が物件により異なってきます。ここでは目にする機会の多い費用とその用途、一般的な金額を紹介させて頂きます。

ハウスクリーニング費用

一般的に退室時のお掃除代として、契約時もしくは退去時に支払う費用です。金額はお部屋の広さによって変わることが多く、1LDKで15,000円から20,000円、2LDKですと20,000円から25,000円前後が一般的です。6LDKの戸建物件で50,000円という物件も見たことがありますので、物件毎にご確認頂くと間違いありません。

お客様が入居する前の清掃ではなく、退去したあとの費用を先払いもしくは退去する時に支払いますので、新築物件でも必要になります。

暖房器具関係費用

ストーブオーバーホール料やストーブメンテナンス費用といった名称で請求される事が多いです。金額は1台あたり15,000円から25,000円が一般的です。

鍵交換費用

シリンダー交換費用という名称になっていることもございます。金額は鍵の種類によって幅がありますが、中古の安いもので8,000円~最新のハイセキュリティな鍵だと20,000円~というケースもございます。

その他の費用

上記以外でも物件により様々な項目がかかる場合がございます。エアコンの清掃料や消臭滅菌費用など様々な項目がございます。わかりやすい名称のものもあれば何に使われるのか少しわかりにくいものもございますので、支払うお金がどんな用途に使用される費用なのか確認しましょう。

初期費用の内容を理解して、お得な条件を引き出すにはどうすればいいのか?

これまでの内容でお部屋を借りる時の初期費用について、それぞれの項目がどんな性質で、どんな用途で使われるものなのか少しでもご理解頂けたら幸いです。初期費用の内容を理解して、実際にお部屋を探してみると…

『初期費用が安い物件って…結局敷金を無くしたり、清掃費用とかを出る時払いにしてるだけじゃないか?』とお気付きになると思います。つまり初期費用の安い物件というのは【支払うタイミングをずらしているだけで実際に支払う総額が安くなっているわけではありません】敷金や退去するときの清掃料金を入居の際に預かることをやめて『出る時に精算してくれればいいですよ』というやり方に変える事で、結果的に貸す側は損をしない仕組みになっています。

前家賃と仲介手数料の値引きが出来るか交渉してみる

では具体的にどのように交渉をすればトータルで安く収める事が出来るのか?というところですが【前家賃】【仲介手数料】【保証会社費用】といった項目を値引き出来ないか交渉してみましょう!この3つの項目はすべて契約時に必要になる費用で、退去時に使用される預託金ではありません。いわば契約をするために必要な手続き費用なので、これらの項目を減額する事が出来れば、素直に安くなったと考えて頂いて問題ありません。例えば敷金を無しにするか、1ヶ月のフリーレントをもらうか選択できる場面ではフリーレントを選択するといった方法で総額の負担を減らしていく事が出来ます。

貸す側も内容を理解したうえで、賃貸条件を決めているので、なかなか思った通りに交渉出来ない部分も多いと思いますが、初期費用の項目を理解し、入居する際の費用だけではなく、退去時の費用の事も考えてお部屋探しをして頂く事がとても大切です。目先の安さに飛びついて、退去時に高額な費用を請求されたというケースもよく耳にしますので、少しでもそういったケースを減らせるように、この記事が参考になれば幸いです。